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朝の風景 第277号

私の日課についての話です。仕事の日は朝4時45分に起床し、5時55分に家を出て近所のバス停まで徒歩6,7分歩いて6時9分のバスに乗り、最寄り駅へ到着します。

永年の習慣なので、この時間は殆ど変わりません。休日には目覚まし時計は使わない為、夜更けまで Netflixを観たり、you-tubeやネットサーフィンを楽しんだりと就寝時刻も翌日になったりします。

それでも元々が早寝早起の自然派なので、昼と夜が逆転するようなことはまずありません。人類も元々は日が沈めば寝て、日が昇れば起きるのが当たり前だった訳で、それが元々に生活スタイルだったと考えています。やがて、火を使う生活や電気の発明が元々の生活スタイルを変えたのでしょうが、一日の長さは古来より変わっていないので、自然の道理に逆流して生活することが生物学的には無理があるのではないかと私は考えています。人類も自然の中の生き物の一部であり、自然の理に沿った生き方が本来は無理のない自然な生活スタイルだろうと考えます。可能なら毎日、7時間は睡眠を摂るように心掛けていますが、大体は6時間半ほどの睡眠時間です。7時間は正確には今の目標です。

私は睡眠時間を減らして生きたとしても、永い寿命の間には少しずつその差が何がしかの原因となって、決して良くはない体調や病気に至ったりする可能性があるのではないかとも考えています。


さて、今回の下書きは梅雨入り前に書いていたので、今の風景等とは違和感があることを承知下さい。

そもそも人生百年時代と言われても、永く生きるだけでは人は必ずしも幸せとは限らないでしょうし、それよりも永い時間の中で培われた生き方が生命の根本に沿っているのではないかと考えます。また、自分の運命も分からないのに、他人の運命など分かる筈もなく、根本は自分に与えられた生命期間を精一杯に全うすることが正しい生き方なのだろうと考えます。

そんな考え方で生きて来たので生活リズムも大体同じ時間に眠くなり、割とスムーズに就寝します。

平均して就寝時刻は平日で夜9時半から10時までの間に、起床は4時過ぎから4時45には目覚ましがなくても目が醒めます。目覚まし時計が鳴ると即座に起きることも出来ます。この季節でも夏場の朝は明るいですし、晩秋から春先までは真っ暗な朝です。季節の変わり目は一早く知ることが出来ます。真っ暗な中を出勤するのも独特の風情があり、どこか懐かしい風景を思い出すような感覚があります。夕方などは小さい頃に思い出に残っている風景があります。特に、思い出すのは夕焼けの風景です。

夕焼けは郷愁があって、いつまでも見ていても飽きませんでした。家々に灯りが灯り始めて、どこかの家でお母さんが「ご飯だから、帰りなさーい」といった声がよく聞こえたものです。

今でもそういった風景も見られなくなりました・・・特に都会の中ではまず見ません。

幼い頃のこんな光景でしたが、今は朝夕の原風景となって、自然の美しさや家族の優しさ、人々の息吹きを感じさせてくれるものになりました。昭和にはこういった可視化出来ない風景があったように思いだされます。


話は変わりますが、私は20歳から50歳までの30年間に亘って喫煙していた時期があり、意志が弱いのか、禁断症状のせいなのか、健康には良くないとは分かっていながら禁煙出来ない期間がありました。

ところが、ある一冊の本で禁煙が出来たのです。その本に私は心から感動したので、その感動を何かに活かさなければと思い、その時、公園でタバコを吸いながら読んでいたので、禁煙をしてみようと決心し、その日限りで禁煙が出来た経験があります・・・それ以来、感動する本というものは読み終わった後に自分の行動が変わるものだと気づきました。勿論、知識を増やすとか、知らない事を知るという価値もありますが、最も価値あることは心の変化に伴う行動の変化だと確信したのです。

しかし、ベストセラー作品でなくても自分が抱えている悩みや意識に沿った良書にはなかなか出会えません。やはり、いろいろ読んでみないと自分に合った良書は見つかるものではないと思っています。

だから、出来るだけいろいろ読んでみて、より多くの本に出会うことが大事だなと考えます。


何事もそうでしょうが、やてみないと分からないという論理だけでは、人はなかなかやり始めることは難しいですし、やれば生まれるであろう結果を具体的に考えて自分をその気にさせないと、鼓舞することも出来ないかも知れません。先の禁煙した時もタバコを吸いながらその本を読んでいたので、読み終えた時にその気持ちを大事にしたい、何かに活かしたいと思い、そうだこれだ!たばこを止めようと決めて実行したら、その日限りで禁煙出来たという不思議な話なのです。

30年間も吸っていたのに、何で止められたのだろう?と自分でも凄いことだったなあと思います。

更に、それからは神社でもお寺でもお願い事ではなく、感謝の言葉が出るようになりました。

何なのでしょうか?・・・


これ程にも変わるものかと自分でも驚きました。お年寄りが神社やお寺に来て、祭壇の前で感謝の言葉を小声で言っていたのですが、その意味することがやっとこの年になって分かるようになりました。

生きていること自体に感謝している訳です。その一冊の本で自分の命や人様の命の大切さを自覚した瞬間だったのかなと今は思います・・・

実はその本を知ったのは全くの偶然からでした。車の運転中に聴いていたラジオ番組でした。忘れもしない珍しい作者名だったにで、記憶に残ったのです。将基面誠さんという大学病院のお医者さんだった方が書いた「無医村に花は微笑む」という本の紹介だったのです。最初は妙なタイトルだなと思ったのですが、作者名が記憶に残り、本屋さんに連絡したら取りよせになりますがと言われ、思い切って購入したのです。

これも何かの縁に繋がっていたのでしょうか?・・・今ではこの方も適塾の緒方洪庵も同じ人格だなと私の中では繋がったのです。


さて、朝の風景で好きなシーンがいろいろあります。

朝早いと烏や雀にも会えますし、カラスは電柱や高い木の上でカーカーと鳴きながら仲間と連絡し合っています。スズメは可愛い声でチュンチュンと飛び跳ねながら移動します。また、犬の散歩やジョギングしている人も見かけます。

そんな時間に乗車するバス停の後ろ側には森みたいに木々が生い茂っている散歩道もあるのです。

付近にはツツジや欅などの木々もあり、風が吹くとサワサワと心地よい風の香りがします・・・

バス停前を走り抜ける車の音も乗用車、オートバイ、スクーター、自転車、ゴミ収集車、トラック、 ランニングする人の足音など、それがいつもの風景であり、聞こえてくる朝の音なのです。


やがてバスが到着し、最初に乗り込むのが大体、私です。バスは遅延も多く、雨が降っている時には乗車する時間がいつもより時間がかかるようで、それなりに遅れて来ます。私が乗車するバス停では数人が乗車しますが、バス停にも車内にもいつもの乗客が多く、座っている人も立っている人もそんな人達です。乗客は無言ですが、これも見慣れた風景です。バスは最寄り駅まで10~15分程かかりますが、降りる際には私は「ありがとう」と運転手さんへ声をかけます。こんなに朝早くから多くの人を乗せて働いているのですから、自然に感謝の言葉が出るのです。


また、車内から見える車外の風景も好きです。同じビル、同じコンビニ、同じ駐車場に停めている車、朝早くからランニングマシンで走っている人などが目に飛び込んで来ます。そう言えば、まもなく紫陽花が咲き始めます。大いに楽しみです。車窓からまとまった紫陽花が見られる児童公園が道路沿いにあり、そこに咲く薄青い姿は咲いている期間も永く、とても楽しみな風景です。バスが走る沿道には春は桜や椿、竹林などもあり、更に秋には私が乗るバス停付近には団栗が落ちています。その頃にはバス停の雨よけ用シートの屋根に落ちる団栗の音が、アニメのトトロのシーンように、ゴソッ、ボソッと愛嬌のある音を出してくれます・・・大きくもなく、小さくもない音でこれも秋の音です。


私は花や樹木も好きですが、それ以上に雲が大好きなのです。晴れていれば、必ずバス停から見える雲にしばし見入っています。雲のことは素人でも、雲が流れる様を眺めていてだけでも飽きないのです。ずっと見入っていると、必ず何かに似ているように見えます。雲の種類や高さや天候との関係を知りたいとは思いますが・・・

兎に角、雲を見るのは好きなのです。どこかで見た記憶や風景と重なっているのでしょうか、小さい頃に見た雲も今ここで見ている雲も風景としては何も変わらないのが好きなのです。

ひょっとしたら、雲の様子も地球温暖化で変わって来ているかも知れません。

冬場の朝は、空がまだ暗く、星はとても綺麗です。星座の名前や由来などを知っているとロマンチックだなと思いませんか?・・・バスが来るまでたったの数分の間、こんなにも私はバス停の風景が好きなのです。だからこそ、毎朝、大体、先頭に立ってバスを待っています。バス停まで歩く時間よりもバス停で待っている時間が永いのです。

出勤時はこのように楽しい気持ちと風景なのですが、帰りはただただ一目散に家へ向かって歩きます。少し上がって行く勾配ですし、車もたまに通る道なので、疲れも重なって心に余裕がありません。

私はこうやって一年中、バス停と自宅を往復しています。


最寄り駅に着いたら急ぎ足で電車ホームへ向かいます。唯一、私の読書場所が電車内なので席取りが重要なのです。朝の太陽が目に入らない座席が最上で、この目標へ向かってバスの中から競争は始まっています。バス内の前方へ乗車し、早く降りられる場所を選んで立っています。電車内での滞在時間は往復で約50分近くかかりますが、私には唯一の読書タイムなのです。周囲に他人がいる方が却って頭は集中出来ます。家では読書はまずしません。家ではひたすら習い事や音楽や動画や映画で過ごします。

また、通勤途中で本が終わりになってもいいように、次に読む本は必ず買ってあります。しかも新刊を探して読みます。

こんな時間割の一日ですが、帰宅してから寝るまでは4時間程です。この時間内に食事も風呂も洗濯物の整理もしますので、それ程ゆっくりした時間はありません。習い事の練習もしているので、家でも結構忙しい訳です。休日でも朝は早く、掃除機掛け、風呂掃除、洗濯もやります。ちなみに朝食も毎日、自分で支度して食べて後片付けしてから出社します。


私にとって朝の風景は唯一、自然と自分が一体化出来る時間です。朝早くても辛いとか思ったことは殆どありません。むしろ、木や花や鳥や雲と日常を交えてそれなりに楽しんでいます。

それ程変わらないバス停からの日常の景色ですが、日が経てば周囲の光景も変わります。

雲、風、匂い、鳥のさえずり、車の音、いつも通る人や車、ランニングしている人、いつもの老犬と老人、停留所で待つ人達、坂を登って来るバスの明かり、・・・これが私の朝の風景です。


最後に、会社近くの駅を降りて、スーパーが開店する迄の10分間の風景も朝の風景です。

外に椅子とテーブルが備えてあり、入り口まで立って待つ人がいつも二人います。それに私の横のテーブル先にいつも座る人、右手に物入を持って目の前の歩道を走る、と言うより昔の飛脚のようにゆっくりと走る人、独特の歩き方の中年女性、花壇に水やりをする男性、道路向かいのコーヒーショップが開くのを待つお客、道路を走る車は違っても、人の姿は大体いつもの通りです。

私の知らない人達ですが、誰彼なくドラマに出て来る出演者のようです。スーパーのレジも大体毎日同じ人です。世間には変化がありますが、変わるようで変わらないが自分の周囲の光景です。

今朝もいつもと同じでした。素晴らしい朝に感謝!



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