2018年6月18日(月)午前7時58分頃、大阪府北部を震源とする大きな地震がありました。 1995年の阪神・淡路大震災、2004年、2007年の新潟県中越地域の地震、2011年の東日本大震災、そして2016年に発生した熊本地震と、近年の日本では大きな地震が繰り返し起きています。世界で発生するM6.0以上の地震の2割が日本で発生しているというデータもあります。また今後30年以内に、東海地震は88%、東南海地震は70%、首都直下地震は70%以上の確率で発生するとも言われており、誰でも大地震に遭遇するリスクがあることは明白です。このような状況において、企業は来るべき災害にどう備えるべきなのでしょうか?
大きな災害に備えて、中小企業が『BCP (Business Continuity Plan=災害時の事業継続計画)』を策定する重要性が高まっています。今回は、BCPを本当に役立つものにするために必要なこと、そしてBCPを実現可能なものにするためのIT活用方法についてご紹介していきます。
内閣府の事業継続ガイドラインでは、[方針]→[計画]→[実施及び運用]→[教育・訓練]→[点検及び是正処置]→[経営層による見直し]…を継続的に行っていくサイクルを紹介しています。年に数度の避難訓練も大切ですが、それはこのサイクルの一部にすぎません。経営者や関連部署の責任者などを交えて、継続的改善を行っていくことが大切なのです。
人・モノ・データを災害から守るためにITでできること
BCPを策定し、継続的な改善サイクルを通して実現可能なものにしていこうと考える時には、『災害発生に備えた準備』と『災害発生後の活動』とで分けて考えていくことが大切です。そしていずれの場合も、ITツールを活用することが大きなポイントとなります。
災害発生に備えた準備
災害発生直後の被害を最小限に食いとめるための『防災』が欠かせません。つまり『人』と『モノ』への被害の備えということになります。例えば、オフィスの什器を固定する、食料や水を備蓄しておく、災害発生時の行動を決め訓練する、安否確認の仕組みを整備する…などが挙げられます。
防災意識が先行していた企業では、非常用飲料水や備蓄食料について、その数量だけではなく消費期限のデータを表計算ソフトで管理し更新していたそうです。備蓄場所の問題はありましたが、いざというときに「期限切れになっている」という事態は避ける対策がなされていたわけです。
▼一般的な表計算ソフトを使った備品管理表の例
災害発生後の活動
災害発生時直後にまず大きな課題となるのは『人』への『安否確認』です。現在では、災害に備えた緊急連絡用掲示板やSNSなどが整備されています。スマートフォンは、通常の通話やメール以外にSNSの活用がしやすいため、多様な連絡手段を一台で担える、緊急時の通信手段に心強いツールです。社員には、個人用のスマートフォン以外に、仕事用の専用スマートフォンを持たせるなどし、定期的に安否確認の訓練をしておくと良いでしょう。
社員や家族、周辺地域の安全性が確保された後は、『会社としてどのように行動し、どのタイミングで事業再開に取り組むか』といったことが重要になってきます。
まず、何が被害を受けると、事業再開が難しくなるかを考えてみましょう。例えばメーカーであれば工場、製造機器が被害を受けていると事業再開は難しくなります。また工場は問題なくても、原材料入荷・製品出荷の目途が立たなければ再開は厳しいことでしょう。このようないわゆる『モノ』の被害に加えて、『データへの被害』も、事業再開には大きな障害となりえます。企業では、商品情報・顧客情報・取引情報など、多くの重要な情報を『データ』化し保有しています。仮に『モノ』の被害がなくても、『データ』が破損したために事業を再開できないという事態は十分に考えられるのです。
『データ』の被害への備えとして重要なのは『バックアップを取っておく』ことです。そして単にバックアップを取っておくことにとどまらず、バックアップへの移行や復帰計画などを策定して、避難訓練のように、災害時のデータ復旧訓練を実施しておくのが良いでしょう。
災害時には、停電による電源の喪失によりデータが失われることもあります。自家発電装置や非常用電源の稼動時間を超えた停電があった場合にどのように対応するかを想定しなければなりません。非常用電源がある内にバックアップを取るなどの行動計画も必要になります。
バックアップは、ハードディスクやCD-ROMなどの記録メディアに残すという従来のやり方以外にも『クラウドサービス』を活用した方法も注目されています。災害から守らなければならないものは、人・モノ・データの三つに大別できます。言いかえれば、これらを守ることができれば、企業は早期に事業再開でき、地域への貢献も可能となるのです。この早期の事業再開のためには、BCPの策定が欠かせないこと、それらを実現するにはITツールを活用することが大きなポイントとなるのです。
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