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vol.109 – 認知症診断[AI]

少子高齢化社会において、”アルツハイマー病”(“認知症”)は、日本においてとくに深刻な問題となります。この問題に対し、技術的な対策な一つとして、「”認知症”診断[AI]」の先行きが注目されます。このままいくと、街中で、「ここはどこ?わたしは誰?」とつぶやいている人々がそこら辺を徘徊する風景が目立ち、昨今話題になる自然災害以上の問題に発展するかもしれません。

富士フイルムが”アルツハイマー病”への移行リスクを脳の画像から正確に知る診断手法を開発したそうです。[AI]と[画像処理技術]を組み合わせて実現しました。まず、新薬開発の臨床試験(治験)の対象者を絞り込む際に使うとのこと。大学や製薬企業と協力し”“認知症””の新たな「診断プラットフォーム」として普及を目指すとしています。

脳の画像から[AI]が発症リスクをはじき出す

メガファーマを含めた大手製薬会社による”アルツハイマー病”の治療薬開発は失敗が続いていました。軽度認知障害(”MCI”)や早期の段階で治療薬を投与し進行を抑えようとしましたが、今年に入ってからも、最も期待の大きかった米バイオジェンとエーザイによる治験がうまくいかず、各社は「敗因」を調べています。”アルツハイマー病”の早期発見や”MCI”の診断は難しいようです。問診による”認知機能テスト”や磁気共鳴画像装置(MRI)画像などで総合的に判断できても、臨床の現場では医師によって判断がばらつくこともよくあります。”MCI”と診断されても、その後”アルツハイマー病”にならない人もかなりの割合でいることがわかってきました。治験の際、こうした診断の「不確実さ」で本来対象者でない人が入ってしまい、有効な結果が導き出せなかったとの見方もあります。移行リスクの高い人をきちんと絞り込めれば、治験の成功につながるかもしれません。

今回、富士フイルムが開発したのは、MRI画像をもとに”MCI”の人が1年後にどの程度の確率で”アルツハイマー病”に移行するかを[AI]が予測する診断手法です。米国で早期の診断法の確立を目指す大規模研究「ADNI」のデータを使いました。”MCI”と診断された約600人分の画像データから特徴を抽出し、深層学習(ディープラーニング)で学ばせた結果、1年後に”アルツハイマー病”になるかどうかを9割の精度で予測できるようになったそうです。

今後、国内の”アルツハイマー病”大規模研究「J-ADNI」の画像データを活用して診断法が日本人にも有効かどうかを確かめる意向です。また実際に”MCI”の人に協力してもらい移行リスクをはじき出し、1年たって”アルツハイマー病”になるかどうか追跡調査します。こうした研究を手がける大学や製薬企業との協力を探っていくことになるでしょう。”アルツハイマー病”を中心とした”認知症”は2050年ごろには全世界で患者数が1億3500万人に及ぶとの推計があります。このまま高齢化が進めば、先進国では”感染症”や”がん”どころではない”最も脅威な病”になりかねません。加齢とともに誰もがなる可能性のある病気なのですが、そのリスクは”運動”や”睡眠”といった”生活習慣”などで[個人差]があることもわかってきており、欧米では発症を遅らせる「予防研究」も進んでいるようです。

しかし、決め手となる治療法がないなか、不治の病を早期に診断するメリットよりもデメリットの方が大きいとみる専門家もいます。医学の進歩で”感染症”や”がん”を克服しつつあるのは、診断技術の進化のおかげです。同様に”認知症”に立ち向かうには、どこの医療機関でも対応できるような診断技術の確立がやはり欠かせません。採血によって”認知症”かどうかを判別する手法の研究開発も盛んになってきています。

“がん”の分野では[AI]による画像診断が臨床でも使われようとしています。富士フイルムも将来的には今回の手法を発展させて、健常者が”MCI”、そして”アルツハイマー病”へと移行するリスクを予測する技術の構築も目指していくそうです。

このように[AI]のような新技術は、病気や犯罪の早期予防・発見に役立っていくものと考えられます。そのため、人間はもっと健康で長生きする世の中になるかもしれません。一方で頭だけしっかりしていても足腰が弱って動けないなど、介護の問題は一層やっかいなことにもなりそうです。長生きしても、ずっと車いすや寝たきり生活になっては、本人はもちろんそれを支える若者たちにも大変不幸な結果を招きます。技術進歩は、そのような問題解決にも活かすように工夫・改善していくことが大切です。

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