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損得と善悪 第2号

日本は今、「IT不況」と呼ばれるような不景気に喘いでいます。 一方、高級官僚から低年齢層まで犯罪に関する出来事も多くなっています。 どうやら、どこかおかしな世の中になって来ました・・・

人の価値観が変わり、自分の満足を人への迷惑よりも優先するようになっています。 人としてやってはならないことをする人が増えて来たのではないでしょうか? 幕末から明治にかけ、日本の産業振興の為に訪れた多くの西洋人が、当時の日本人を観てこう評しています。 「彼らは木や藁で出来た粗末な家に住み、主に魚や野菜を食べる質素な生活をしていながら、他人のものを盗んだりすることが少なく、勤勉で親切で正直な民族である。我々にとっては不思議ですらある」と・・・

また、こんな話もあります。発明王エジソンが日本人に対し、大きな興味を持っていた話です。 彼の研究所に唯一人の日本人がおり、ピクニック(2,3日かけて車で移動する大掛かりなもの)にコックとしてよく同行させており、エジソンのお気に入りの人物だったようです。 また、書庫には日本に関する書籍が数多く残されているそうです。 エジソンも同じように「アジア人でも日本人はどこか違う。貧しければものを盗んだりするものだが、この日本人にはそんな部分が全く見当たらない。何故、日本人は他の東洋人と違うのだろうか?」と思っていたそうです。

西洋の価値観から観れば、貧しければ悪いこともするし犯罪も起こすのが道理なのではないでしょうか?

私は日本がおかしくなって来たのは、社会の仕組みの多くが「損得の価値観」に基づいているからだと思います。 日本は第二次世界大戦で敗戦国となり、アメリカの指導の下、民主主義を取り入れて来ました。

個人主義、発言の自由、戦争放棄、豊富な物資など多くの点を取り入れて来ました。 正に敗戦国から復興を遂げ、先進国の仲間入りも果たしました。 そこに到るまで国民全体が一生懸命に汗水流して働き、多くの我慢もし、兎に角働きました・・・ これで良いのかという疑問よりも兎に角、姿・形に追いつくことが先決だったと思います。 しかし、そこには「人間の基軸」が置き去りにされていたのではないでしょうか? 損得だけの価値観では我々日本人は疲弊し長続きしないのではないでしょうか?

我々日本人は「農耕民族」であり、決して「狩猟民族」ではないと思います。 西洋人と日本人は、元々、人種的に違うと思います。

例えば、西洋人は肉食中心であり、日本人は野菜や魚などが中心です。 肉食動物は家族単位で移動しながら獲物を見つけ、生きるか死ぬかの狩りを行い、力で相手をねじ伏せます。 獲物を食べ尽くすと、新たな獲物を求めて更に移動します。 家族をとても大切にし、相手に勝つことが生き延びる原点です。

一方、農耕民族は闘争を好まず集団で生活し和を尊びます。掟が作られルールが優先されます。 また、固定化された田畑で穀物を生産し、自然災害と戦いながら品質や生産を重視します。

この両者の違いは、「力:和」、「闘争:平和」、「攻め:守り」、「差:平均」、「具体論:抽象論」、「個:集団」などのキーワードに象徴されると思います。 日本は産業立国であり、世界経済のグローバリゼーションの中に立国しています。 資源がなく、物に加工し付加価値を付けその差益で成り立って来た為、同じ製品を安く作る国が出て来れば、立国の基盤は根底から危なくなって行きます。 そこで更に、先進国である欧米に見習い、工業化社会から情報化社会への変化をやり遂げようとしています。

しかし、欧米型の損得の価値観では、行き詰まってしまうのではないでしょうか? 特に最近、中高年の人達で疲弊した人達が多いと感じます。 リストラ、再雇用不安、家長不在、滅私奉公・・・などそれらを象徴しています。 損得という営利的価値観ではなく、人間としての価値観が必要だと思います。 それは 善いことは善いことであり、悪いことは悪いことだと言える価値観ではないでしょうか?・・・

企業では損得が優先され、利益の出ない企業は滅んで行くのも事実です。 利益の出ない企業は罪悪とさえ言う人もいます。 しかし、それだけで人間は生きて行けるものでしょうか? 損得と善悪は相反するものではなく、別物だと思います。 人間尊重の上に立ち、人間の可能性を信じ、その上で損得を考える企業作りが必要になって来たのではないでしょうか・・・・

そんな企業がこれからの新しい企業像になるものと期待します。 特に、これから起業される若い人達にはそうであって欲しいと願う次第です。

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